本コラム第2回目は、なぜこれまで設計図書を電磁的記録で作成して電磁的記録での保存が進まなかったのかを考えてみたい。
建築士法においては、建築士が業務として作成した設計図書に記名押印をし、定められた設計図書を建築士事務所開設者が15年間保存しなければならないとされており、これらの設計図書を電磁的記録(電子データ)により作成し、あるいは保存することは2005年に施行された、いわゆる「e-文書法」によって可能となっている。
つまり、建築士法には設計図書を書面(紙)で作成するときの規定が書かれているのだが、これら設計図書の電子化に関しては建築士法には一切記載せず、全く別の「e-文書法」で電子化を可能にするという法令の構造となっており、これが設計図書の電子化を進めるうえで最も障害になっていたと考えられる。さらに、この複雑な法令体系を解説する書面やガイドラインは10年以上経過しても出現せず、建築業界において、「e-文書法」の建築士法にからむ部分(国土交通省からの省令)は忘れられた存在となっていた。
一方で、設計図書と同様に15年間の保存義務のある工事監理報告書については、「e-文書法」ではなく建築士法第二十条第四項で「当該結果を電子情報処理組織を使用する方法-中略-により報告することができる。」と電子化が可能なことを記載しているので、建築士法に記載のない設計図書の電子化は認められていないと誤解してもやむを得ない側面もあった。
また、2017年までは、インターネットで「設計図書のPDF保存」と検索しても、コラムの第1回目で紹介したように、一般財団法人建築行政情報センター(ICBA)が公開している「確認・検査・適合性判定の運用等に関するQ&A」くらいしか信頼のおける組織からの公開文書が検索結果に上がらず、これの不充分な回答により、設計図書の電子保存は出来ないという思い込みが定着していったものと考えられる。
更には、スキャニング事業者のホームページでも「設計図書の電子化は認められていない」とする誤った記述が当時は散見され、ICBAからの不充分な回答を誤った方向へ補強する存在となっていた。
JIIMA建築WG(現:JIIMA建築市場委員会)では、こういった調査・分析やICBAへのヒアリング等を2014年末頃まで続け、本当は設計図書の電磁的記録による作成と保存が可能であることを、法的な根拠を説明し、ICBAのQ&A回答の真の意味を伝えなければ、何時まで経っても普及しないと考え、当該ガイドラインの作成を決意したしだいである。
(2)終わり